「女の方なら、こういった白木の祭壇を好まれると思いますよ」
物腰のやわらかい葬儀社の社員は、そう言って「このような感じになります」とパンフレットを差し出しました。
美しいカラー写真がたくさん使われたパンフレットの誌面の中でも、その祭壇は特に目をひきました。白を基調として、薄いピンクから紫にかけて、たくさんの花々でグラデーションを施していたのです。
ノリ子さんは、とても花好きだったお母様のことを想い、
「では、これでお願いします」
と葬儀社に依頼したのですが…。
そのパンフレットには、「こんなに美しい花祭壇…葬儀が70万円で」と書かれていたので、ノリ子さんもそのつもりでいましたし、葬儀社からもこれといって詳しい説明もないまま、葬儀はどんどんすすんでいったのです。
祭壇を準備する際、葬儀社員はノリ子さんに「生花はどうしましょうか?今の季節ならトルコキキョウが良いですし、色もたくさんありますよ。それに、最近では故人の好きだった花を選ぶことが多いようです。いかがですか?」と言いました。
ノリ子さんは、
「そうですねぇ、花好きな母でしたから…あと、薄いピンク色のユリがあれば、入れてください」
と頼んだ結果…。
葬儀後の請求では、239万円という料金を請求されたのです。
驚いたノリ子さんは、思わず大きな声で「えっ!どうしてこんな金額なの?葬儀が70万円じゃないの?!」と言ったところ、葬儀社員は平然としてこう答えました。
「あれだけたくさんの花を使った祭壇ですから、妥当な金額だと思います。」
「それじゃ70万円でなんて納まるわけがないでしょう?あのパンフレットはウソなのね!」
「いいえ、本当です。あのパンフレットの写真にある祭壇は、全て造花を使用しておりますので」
よくよくパンフレットを見ると、隅の方に小さな字で「ただし造花使用の場合」とありました。
「だったら一言、そう言ってくれたら…」
「祭壇を準備する際に、“生花は…?”と、お尋ねしております」
「それじゃ、この“特別手数料50万円”っていうのは?」
「今の季節、薄いピンク色のユリを探すのにたいへん手間どりましたので、手数料でございます」

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