「まさか、こんな思いをするなんて…。」
何十年という長い年月、一緒に歩んできた奥様を亡くされたS木さんに、さらに追い討ちをかけるような出来事が…。
奥様が亡くなられたのは、ある大きな総合病院でのことでした。深い悲しみの中で呆然とするS木さんに対して、病院側は事務的に割り切った口調でこう言いました。
「そろそろベッドをあけてもらわないと。後がつまっていますので、ご協力お願いします。葬儀社はお決まりですか?お決まりでなければ、こちらから紹介させて頂きますが。」
「………。」
特に決めたところがあったわけでもないS木さんは、病院側から紹介された葬儀社に依頼することにしました。その葬儀社は、今までに何度となく名前を聞いたことがある、地元では結構と有名な葬儀社でした。
「葬儀はどのようにいたしましょうか?」
と聞かれたS木さんは、
「大きな葬式とかはしなくてもいいんだ。火葬さえしてもらえれば、あとは身内だけで送ってやろうと思ってる。」
と答えました。
そこで葬儀社員がボソッともらした言葉は「“焼きのみ”か…」
“焼きのみ”は、“火葬のみ”を指す言葉ですが、たった今奥様を亡くしたばかりの人に向かって、これ以上、失礼な言い方はありません。
病院が紹介する葬儀社は、一般の民間企業に置き換えて言えば、何の営業努力もせずにお客様を得ているわけです。たまたま自分の順番にあたったS木さんが、儲けの少ない葬儀だったために、あんな言葉が口に出たのです。
自分で何の努力もせずに、「儲けが少ない葬式にあたってしまった」と文句を言う…葬儀に関わる仕事をしている者として、なさけない限りの葬儀社です。
病院から紹介されたからといって、その葬儀社に決める必要は全くありません。「葬式の準備なんて…」などと言わずに、前もって葬儀社を決めておくのも良いことだと思います。良心的な葬儀社なら、さまざまな相談に心よく応対してくれますから、そういった従業員の態度も目安になると思います。

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