葬儀

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人生の卒業式

桜が咲く季節になると、あるお婆ちゃんのことを思い出します。

マツさんは、97才でこの世を去りましたが、その生涯は安穏なものではありませんでした。16才の時に幼なじみの男性と結婚して、三男四女に恵まれたマツさんなのですが、ご主人を早くに亡くしたため、29才という若さで未亡人となってしまったのです。それからのマツさんは、再婚することもなく、女手ひとつで7人の子供たちを育てあげました。ただでさえ物資の乏しい時代ですから、並大抵の苦労ではなかったと思います。

私がマツさんと初めてお会いした日から、いつのまにか10年の月日が流れていました。

葬儀に対する考え方も、時代と共に変わってきています。昔は「前もって葬式の準備をするなんて縁起でもない」といった方が大半でしたが、現代では「子供には見送ってもらうけど、自分の葬儀ぐらい、自分で準備する」といった考えの方が多くなってきているようです。

マツさんも、そういった考えを持った方でした。直接、当社を訪れたマツさんは、当時87才とは思えないほどシャンとしていて、声も若々しくハリがありました。「子供たちの方がオタオタしているんですよ、困ったもんですねぇ、もう皆いい年になってるのに…ま、私からみればいくつになっても“まだまだ子供”ですけどね」と、マツさんは明るく笑って言いました。

マツさんが体調を崩し、寝たきりになってから、自宅で人生最後の1年を過ごしました。その間、三男のお嫁さんたちと、近くに嫁いでいた四人の娘さんたち、それにお孫さん達も加わって、ローテーションを組んで介護にあたったといいます。「疲れた顔を見せると、お母さんが悲しい顔をする。お母さんに悲しい思いはさせたくない」と、皆で相談して決めたそうです。

長年ひとりで子育てに奮闘したマツさんですが、息をひきとる瞬間には、子供、孫、ひ孫というたくさんの人達に見守られていました。まさしく、それがマツさんの生きた証だったと思います。

葬儀で喪主が「自分の生き方を通して、たくさんのことを教えてくれたことに感謝します。人生の師だと思っています。ほんとうにありがとうございました」と挨拶し、最後の見送りとなったとき、誰からともなく「仰げば尊し」を歌いはじめ、やがて全員での合唱となりました。

-思えば いととし このとし月 いまこそ 別れめ いざさらば -

こうしてマツさんは、桜の花びらが舞い散るなか、人生の卒業式を終えたのでした。

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